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2006年8月30日 (水)

貸出金利の引き下げで多重債務者問題を解決できるのか?

最近、貸出金利の上限引き下げをめぐる議論が終盤を迎えている。
引き下げの方向は固まって、例外をどこまで認めるかが争点のようだ。
なぜ引き下げを行うかというと、多重債務者の問題を解消するのが理由とされているが、もともとの発端となったのは、最高裁で、利息制限法での法定金利を超える利息の返済については、かなり厳格な要件を満たさない限り、無効とすると判決が出たことだ。
ところで、貸出金利の上限を引き下げれば、多重債務者の問題が解決するのだろうか。

利息制限法と出資法の間の金利、いわゆるグレーゾーン金利は、出資法の数度の改正を経て差が縮まってきた。
出資法の上限金利は、1991年11月に54.75%から40.004%に、2000年6月にはさらに29.2%に引き下げられている。
これらの引き下げによって、多重債務者数は減ったのか。
多重債務者と一言でいっても定義が難しい。
個人により年収や生計(扶養者数など)が違うので、どれだけ借りれば多重債務者かは一概に言えないからだ。
ただ、多重債務者の行き着く先が自己破産となることから、自己破産申立件数について見ると、出資法の上限金利の引き下げによって自己破産申立件数が減ったとはとても言いがたい。
1991年から1995年はほぼ横ばい、1996年から2003年まで一貫して上昇、2003年に242,377件とピークをつけて、2004年に21世紀になって初めて前年度から減少した。
自己破産申立件数は上限金利引下げにより下がったとは到底言えない。
そのため、上限金利を引き下げれば、多重債務者問題が解決するとは言いがたいのだ。

自己破産申立件数は実は、まったく別の指標と強い相関性がある。
それは、失業率である。
失業率のグラフと自己破産申立件数のグラフを重ね合わせると、その形が非常に似通っている。
ということは、失業により落ち込んだ収入を雇用保険等でカバーしようとしたもののままならず、保険の期間も切れて収入もなくなり自己破産を申し立てたとなるのではなかろうか。
失業率が増えても自己破産申立件数が増えない方法はある。
それは、政府がセーフティーネットを充実させることだ。
逆に言えば、失業者に対して政府が十分な対策を行わなかったから、失業者の伸びに応じて自己破産申立件数が増えたともいえる。

今日の日経新聞に載っていたが、アメリカ政府も上限金利の引下げに反対と日本政府に伝えたそうだ。
過度の経済への干渉を嫌うアメリカらしいといえばアメリカらしいが、シティグループやGEキャピタルなど日本に消費者金融子会社を抱える企業の意向を組んだともいえる。
日本の金融庁はこれに反対するようだが、消費者保護といいながら、失業者対策を怠った日本政府が上限金利の高さを悪者にして、自らの無策ぶりを隠しているようにしか見えないのは、筆者だけだろうか。

ところで、上記のようなデータは一般の人にも簡単に手に入る(例えば消費者金融連絡会のタパルス白書など)。
しかし、多重債務者問題の解決と上限金利の関係についてきちんと考察をしているマスコミはほとんど見受けられない。
結果として、金融庁の主張するような、「多重債務者問題の解決には上限金利の引下げが必要」という議論に安易に流されているようにしか見えない。
もう少しマスコミも勉強して報道すべきではなかろうか。

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コメント

コメントいただきありがとうございます。
おっしゃるとおり、多重債務者は金利だけで解決する問題ではないんですよね。
消費者金融からお金を借りる人って、必ずしもそこから借りているわけではなく、金利がおそらく付かないと思われる、親戚・友人からの借入もあるんですよね。
返済能力という観点からすると、どのように生活再建を進めるか、就労などの収入確保手段をどのように手当するかといったことを詰めない限り、消費者金融だけを悪者にしても解決できないと思います。

投稿: ぴーひょろ | 2006年9月24日 (日) 22時31分

「多重債務者は200万人」という数字が踊ってますが、一体どうやって数えたのかが全く不明です。因みに、仮に二重債務以上だとすると800万人ぐらいになります(^^;)。本質的には「多重債務」が問題なのではなく「過重債務」(返済能力を超えた借入)が問題のはずです。債務者にとっては金利は低いに越したことはないのですが、どうもこの国では金利だけが焦点になりがちです。上限金利をさげるなら、脱落需要者の受け皿を用意しておかないといけないと思うのですが、それも殆ど話題になっていません。かなり悲しい気がしています。

投稿: K.I | 2006年9月23日 (土) 22時47分

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