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2006年10月 1日 (日)

竹中平蔵が逃げたもう1つの理由

竹中平蔵が総務大臣と参議院議員を辞職した理由については、以前このブログで触れた
筆者はそれ以外にも辞職した理由があると考えている。

それは地方財政、特に地方債問題だ。

現在発行されている地方債には、国が最終的に信用を保証している暗黙のルールがある。
しかし、これには明確な法律根拠がなく、大臣の国会答弁という口約束が生きているだけでしかない。

ところが、実際にはこの口約束をベースに今の地方債に関する制度が成り立っている。
例えば、都道府県や政令指定都市の発行する債券(公募債)を、普通の個人も購入することが出来る。
債券を発行するという場合は、証券取引法上目論見書を作成することが義務付けられているが、国債の場合作成が免除されている。
つまり、財務状態のディスクロージャーが不要とされているのだ。
また、BIS規制での自己資本には国債への投資をリスクアセットに含める必要がない(リスクの掛け目がゼロ)。
これらは、国債が信用力があるためだ。
そして、地方債にも国債と同様、目論見書の作成免除やリスクの掛け目ゼロが認められている。
これは、国が地方債の償還と利払いを保証しているからだ。

ちなみにBIS規制では地方債のリスクの掛け目は20%。
だが、日本の地方債は日本国が信用を保証しているのだから、掛け目ゼロにしろと、政府がBISに対して押し込んだらしい。

ところが、地方財政の危機が叫ばれる中、地方自治体の重要な資金調達手段の一つである地方債に対し、市場による選別が働き出している。
具体的には、こりゃ財政がやばいという自治体の発行する地方債は、金利をその分上乗せしないと買ってもらえないということになってきているのだ。
現に、地方債の発行市場でも自治体ごとに金利の差がつき始めている。
特に大阪府は上乗せ幅が大きかったりするわけだ。

ここらへんについては、日経新聞なんかは財政規律の観点から望ましいなんていうような論調を載せていたと思うが、今まで述べたことからわかるように、事はそんなに単純ではない。

地方債は国が信用を保証していることを理由にディスクロージャーの義務が免除されている。
したがって、地方債を保有している個人投資家は、地方債の目論見書もなければ、財務状態も知らされることもなく、地方債を買っているわけだ。
そんな状態で地方自治体が財政破綻し、個人投資家が損害を被った場合は、誰が責任を取るのだろうか。
販売した金融機関や証券会社は法令上そのような説明義務が免除されているわけだし、説明するための情報も開示されていないわけだから、責任はない。

そのような状態を放置しておいた総務省が責任を取らされるわけであり、そんなわけで総務大臣だった竹中平蔵が逃げたのではないかと思う。

地方自治体が破綻なんて、夕張市のようなごく一部の事例と思ったら、それは考え方を改めたほうがいい。

今地方債発行市場でどんなことが起こっているか。
地方債発行では、今の国債発行と異なり、引受シンジケート団(略して、引受シ団)が地方債の発行の引受・募集を行っている。
引受シ団に属する金融機関や証券会社が、地方債の発行条件を決めて引き受けるわけだ(一部は個人投資家にも販売する)。

この引受シ団だと、そこに所属する限りは地方債を引き受けなくてはならない。
すると、この信用力のない自治体の地方債は保有したくはないと考えた場合、引受シ団から抜けることになる。
実際にこのような動きが見られ始めているのだ。

一社でも引受シ団から抜けると、その中のほかの金融機関や証券会社がより多く地方債を引き取ることになり、それだけリスクが増す。
するとそのほかの金融機関や証券会社も抜け出すということになり、悪循環が起こるわけだ。

だったら、目論見書の開示などのディスクロージャーを充実させればいいということもできるが、これは大変な作業になる。
今まで国にせよ地方自治体にせよ、財政はキャッシュフローベース(金の出入り)だけでしか捉えてこなかった。
信用力があるかどうかというディスクロージャーを作成するには、貸借対照表を作成し、どれだけ自治体に純資産があるかを明確にしなくてはならない。
すると、自治体の中にはどれだけの資産があって、取得価額や時価を全部洗い出さなくてはならない。
毎年決算で貸借対照表を作成する企業でもこの作業は大変なのに、多くの土地や建物を保有している自治体にとってはとてつもなく大きな作業となる。

現在は引受シ団が個別に自治体と交渉して地方債の金利等の発行条件を決めているが、地方自治体の財政状況によってより金利差が広がれば、引受シ団制度も崩壊し、国債と同じような入札方式になってしまうかもしれない。
その場合、個人投資家の保護はどうするのか。

個人投資家を保護するという観点では、証券取引法に基づき、金融庁が地方自治体のディスクロージャーが適正かどうか検査するという体制が必要になる。
しかし、2006年9月28日の日経新聞には、地方債を発行する地方自治体を管轄する総務省は金融庁の干渉は受けないと突っぱねている。

個人投資家の保護も図れないまま、地方自治体の信用力を背景に、地方債の金利差が広がりだしている。
地方債のデフォルトが起こったら、誰が責任を取るのか。
竹中はそのような事態も既に見越しており、総務大臣と参議院議員を辞職して逃げたのではないかと思われる。

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