日銀の失敗~2月の利上げは正しかったか?
ここ数日、世界同時株安が発生している。
上海や深センでの株式市場の急落が、世界同時株安を引き起こしたと、テレビを中心に一般的なマスコミは解説しているようだが、筆者は、上海株式の急落は世界同時株安のきっかけでしかないと考えている。
それはあくまで経済をあまり理解していない人向けの単純な図式でしかない。
むしろ、アメリカでのGDPの確報値の大幅な低下や1月の耐久財新規受注の大幅な悪化が要因として大きいと筆者には思われる。
バーナンキFRB議長が利上げを何度か行ってきたが、これがアメリカ経済にジャブのように効いてきているようだ。
アメリカは景気低下に向けた軟着陸に成功しつつあるという大方の予想を裏切ったのが、今回の大幅なアメリカの株安であり、これがむしろ世界経済に悪影響を及ぼしそうだとして、投資家が株式市場から資金を引き上げたと思われる。
上海や深センでの株式市場の急落といっても、もともと国内投資家専用の市場が過熱気味だったのが、政府による引き締めにより景気悪化しそうだとうわさが広まって資金を引き上げだしたことが原因。
オリンピック特需に沸いている中国国内の投資家がバブルを引き起こしていたわけで、PERも40倍ぐらいと他の市場に比べてかなり高すぎた。
他の市場のPERは10数倍であり、それほど高くはない。
中国市場の急落はあくまで中国人投資家にしか影響がない範囲だったわけで、中国発の世界同時株安というのは短絡過ぎる。
さて、日本では2月に日銀が利上げを行った。
一部には、政府の反対を抑えて日銀の独立性を示したと評価する向きがあるが、筆者は全く逆の意見である。
なぜこの時期に利上げしたのかの理由が不明確だからだ。
日銀は1月の利上げを見送ったが、この理由としては、個人消費が伸び悩んでおり物価が上昇していないことが理由として挙げられた。
安倍政権の反対に屈服したのか否かという評価はさておき、物価が上昇していないから利上げはしないというのは実に経済学的に整合的な論理である。
それなら利上げを行った2月に物価や個人消費に関する指標は改善したのだろうか。
答えは否だ。
では、なぜ利上げを行ったのか。
2月のG7で、日本が低金利政策を続けているがために、円で資金を調達し高金利国通貨で運用する円キャリートレードが、世界経済を不安定にしていると声明が出たからである。
円キャリートレードが膨張していたのは1月でも同じである。
だったら、1月にでも利上げを行い、円キャリートレードによる投資の過熱を抑えることが必要だったのではないか。
2月に利上げを行い日銀の独立性を保ったなんていう人もいるが、円キャリートレードを恐れる外圧に肩を押された格好なのだ。
このような状況の中、日米の金利は今後どのように展開し、どのような経済環境を生み出すのか。
米国では、経済指標の悪化を受け、利下げを求める声が高まる可能性が大きい。
すると、日米の金利差が縮小し、円キャリートレードの巻き戻しがより加速するかもしれない。
つまり、買っていたドルを売却し円に換え、調達した円貨を返済することになるわけだ。
その結果、一時的かもしれないが、大幅な円高が加速する可能性もある。
すると、輸出企業の想定レートの見直しも余儀なくされて、企業業績が下方修正されることおそれがある。
株価の調整が一時的なものだと思っている人も多いようだが、その予想を裏切る結果になるかもしれない。
いずれにせよ、今回の世界同時株安が、今後日米の金利差や株価にどのような影響を与えるかは、あらかじめ意識しておいたほうがよかろう。
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